
11月18日、「台湾スーパーカップ」開催中の台北で、ラルフ“カイザー”スーケーにインタビューしました。昨年のチャンピオンが、今年一年を振り返ってくれました''^_^
……3月に314シャフトに変えたと伺いましたが、その後、調子はどうですか?
スーケー:314シャフトには満足しています。今まではノーマルシャフトを使用していましたが、入れの安定性を求めて変えてみることにしました。Zシャフトも試しましたが、太さ等が私には合いませんでした。
……去年、あなたは日本で2勝(ジャパンカップ、全日本選手権)しています。しかし、今年は一年を通じてまだ目立った成績を上げていません。ご自分で今年の成績をどう思われますか?
スーケー:まず、2004年でさえ、私としては満足のいく成績ではありませんでした。幸いにも日本では勝てましたが……。2005年はと言えば、まあ、「壊滅的」と言っていいでしょうね(笑) 出だしはまず順調だったと思います。ですがヨーロッパ選手権9ボール決勝(3月)で、アレックス・レリーに8−5でリード(9先)していながら勝てなかったのが痛かったように思います。それからどうも根本的な部分で上手くいっていない感じがします。今年のプレー内容自体は悪くありません。ですが、どうにも結果が伴いませんでした。今年も残りわずかですが、来年に繋がるような良い結果を、ここ台湾と、そして日本で残したいと考えています。
……今年、台湾の選手は勝ちまくりでした。台湾、とりわけ呉珈慶に代表される10代の選手たちに関してどう思われますか?
スーケー:呉珈慶はとても才能のある少年だと思います。昨年、私は彼のフィリピンでの試合(「On Cue 3」)をTV解説しましたが、その時ですら彼は世界のビッグトーナメントに勝てる潜在能力はあると感じていました。ですが、私は間違っていましたね。潜在能力も何も、彼は今年、9ボールのみならず8ボールの世界チャンピオンにまでなってしまったのですから!先週の彼は非常にラッキーでした。ホーマンとのベスト8の試合(8ボール世界選手権)、ヒルヒルで自分が8ボールをミスしたにもかかわらず、今度はホーマンがとても簡単な8ボールをとばしてしまいました。2003年に世界チャンピオンになっているホーマンがです。しかし、そのホーマンもチャンピオンになった時は、ブスタマンテとのヒルヒルの試合(ベスト8)で、ブスタマンテの7番イージーミスから勝ち上がっています。「ラッキー」は非常に重要なのです。もちろん、「ラッキー」を掴むためにはより優れた実力が必要なわけですが。呉珈慶だけではありませんね。台湾には世界ジュニアを二連覇している呉育綸もいます。毎年のように優れたプレイヤーを生み出す台湾の育成システムは本当に素晴らしいと思います。

……今年7月のワールドゲームズ、当初あなたの名前はありませんでした。参加されることになった経緯を教えてください。
スーケー:うーん、それはとても長い話になってしまいます。出来るだけまとめてみましょう(笑)2004年のヨーロッパ選手権9ボールが始まる前、「9ボールのファイナリスト2人は自動的に来年のワールドゲームズの代表になる」とヨーロッパ協会から聞かされていました。結果、トーマス・エンゲルトが勝ち、私が準優勝でした。その時点で私は権利を獲得したはずだったんです。ですが、ドイツ協会が主催者のワイルドカードをその時点でのドイツチャンピオン(トースティン・ホーマン)に与えると言ってきました。我々3人はみなドイツ人で、ワールドゲームズには同一国から最高2人までしか出られないという規定があります。結局、私がはじき飛ばされたわけです。ですが、ワールドゲームズが始まる2日前、台湾の世界選手権が終わってドイツに帰国していた私に、ヨーロッパ協会から電話がかかってきました。「ワールドゲームズに出ないか?」と。直前のキャンセルがあって枠が出来たからと。私は「既にドイツからは2人選ばれているから無理だ」と答えました。協会の方でもそれは了解していて、私以外のヨーロッパランキング上位選手に連絡を入れたのだが、すべて断られてしまったと。上限2名はこういう事態なので目をつぶると。結局私はスペインに一週間休暇に行く予定をキャンセルして、ワールドゲームズに参加することにしました。参加すること自体、とても名誉なことですから。結果はご存知の通り一回戦負け。体調、モチベーション共に準備不足でした。もっと早く決まっていればと思いましたね。
……今年、私(マチルダ)はたくさんの国に取材に行きました。正直非常に疲れました。ですが、そんな私より、あなたは遙かに多くの移動をこなしています。しかも毎年です!どのようにして旅の疲れを癒し、コンディションを整えていらっしゃるんですか?
スーケー:ほぼ15年間、こういう生活をしていますが、ここまで多くなったのはこの4年間くらいでしょうか。若い時にはジョギング等の他のスポーツで時差ボケを解消したりしていましたが、最近はホテルのフィットネスジムを活用することが多いですね。もっとも滞在先すべてにそういった施設があるわけではありませんが。ただ、年を追うごとに「旅慣れ」して来ているのは確かですね。
……8ボール世界選手権では9位タイ。正直、あなたのプレーは8ボールや14−1に向いていると思いますが、どうでしょうか?
スーケー:ありがとう。でも私としては特にそういうことを意識することはないですね。先週は3連勝でベスト16入り。ダリルピーチとのベスト8戦でも4−0まではすべて順調だったのですが……。結局ヒルヒルまでもつれ込み、難しいポジションプレーをこなしてあと一歩というところで手玉がよれて隠れてしまいました。結局その試合に負けてしまいました。今年2005年は、言ってしまえばそういった試合の連続だったんです。

……毎試合前、あなたが心がけているもの、ルーティンと言えるものはありますか?いつも同じ物を食べるとか、同じ音楽を聴くとか。
スーケー:試合のタイムスケジュールはその大会ごとにまるっきり異なります。この大会(台湾スーパーカップ)のようにタイムスケジュールがキッチリ決まっている試合もあれば、呼び出しをじっと待っていなければいけない試合もあります。ですから、ルーティンと言えるものは特にないですね。音楽も特にこれというものはないんです。聞く聞かないもその時の気分次第ですしね。ただ、試合の3時間前には確実に身体が「起きて」いる状態にはしています。というのも、昔は朝一番の試合でも全く問題なかったのが、ここ数年、明らかに朝に弱い体質になってきているからです。
……全日本全主権の翌週にはアメリカで高額賞金をうたうIPTの招待試合があります。残念ながら日本選手は参加しませんが、あなたはIPTについてはどうお考えですか?
スーケー:いずれにせよ、まだ始まっていないツアーですから。何とも言えませんね。ただ、我々選手にとっては高額賞金は大変魅力的ではあります。来年も5つの試合が既に告知されています。スポーツの世界でビリヤードが認知される大きなチャンスだと思いますから、私としては今年の大会が成功して、来年以降継続して開催されることを祈るばかりです。またIPTに触発されて、他の試合の賞金も上がるようであれば素晴らしいですね。
……最後の質問ですが、全日本選手権に対してのあなたの思いを聞かせてください。
スーケー:全日本選手権には特別の思いがあります。何故なら1987年以来ずっと出続けている大会だからです。うーん、敢えてこの場を借りて言わせて貰えば(笑)、練習テーブルがないことをどうにかして欲しいですね。これは全日本選手権に限らず、日本の試合では一般的にそうなのですけどね。でも、試合の前にウォーミングアップをする場所がないスポーツがあるでしょうか?確かに近くのビリヤード場で練習することは出来ますが、全くコンディションの違う台で撞いてもあまり意味がないわけです。せめて試合前に十分な練習時間があれば別なんですが。その台のコンディションに素早く対応するのが上手い選手もいます。私も昔はそう苦にしなかったのですが、年を追うごとに難しくなってきました。単に昔はアバウトだったんでしょう(笑)。 ただそうは言っても、日本の試合は非常に整然と進行していきます。その点はとても素晴らしいと思います。昨年の優勝は本当に嬉しかったですね。二連覇?もちろん狙っていきますよ(笑)
