オリバーは泣いていた。ゲームボールを前に小さくガッツポーズし、天を仰いだのは涙をこらえる為だったのか。オリバー・“オートマン”という名前から連想される、冷静で、機械のように正確なプレーが彼の持ち味だと信じていた。だから、例え世界選手権に勝ったからとはいえ、彼が人目をはばからず目頭を押さえるイメージが私にはなかったのだ。
今大会の主役がミカ・イモネン(Mezz)であったことを否定する者はいないだろう。昨年のファイナリストにして、現10ボール世界選手権、US9ボールオープンのチャンピオン。大会開始前日にはチャレンジオブチャンピオンズに優勝し、長時間のドライブでふらふらになりながら大会をスタートしたイモネンは、初日を1勝1敗で終え、2日目にマイク・シーゲルから致命的とも言える2敗目を喫してしまう。しかし相手関係にも助けられ、グループ3位で抜けてからは人が違ったようにランを重ねるようになる。シーゲルにリベンジした勝者最終でハイラン150を叩き出すと、ベスト16の羅立文(K.Andy)戦、ベスト8のデイビッド・ダヤ、ベスト4のトースティン・ホーマンと、相手をまったく寄せ付けない圧勝劇を繰り広げたのだ。決勝の相手はオートマン。オートマンもベスト8で175点のハイラン賞を出したアーチャーを倒しているとはいえ、会場の誰もが、イモネンの優勝で堅いと思っていたに違いない。
決勝のブレイクはオートマン。取り出しは薄いがある。だが、イモネンの初球が薄すぎたのか、クラスターをかすめた手玉がブーメランのようにイモネンの手元に戻り、コーナースクラッチ。唇を噛みしめるイモネン。ここからオートマンが怒濤のような入れが6ラックに渡って続くも、ブレイク後の取り出しでミス。さあイモネンの反撃開始か。狙えるのはロングの7番のみだが、とぶ球ではない。しかしこれが痛恨のカタカタ。私の隣りで、羅立文(K.Andy)が一言、「プレッシャー……」とつぶやいた。ここからオートマンは更に102点のランを重ね、イモネンに回った時点で点差は187点になっていた。今大会のイモネンなら、アーチャーのハイラン越えにもなる大逆転劇は夢ではない。だがさすがのイモネンも人の子だったか。ランは63でストップ。事実上、そこでこの試合は終わってしまった。
優勝セレモニーの中、DP主催のチャーリーの口から、オリバーの涙の理由が語られた。そんなこと言うんじゃねえよとばかり、おしぼりをチャーリーに投げつけるオリバー。マイクを渡され、絞り出すように彼はこう言った。「確かにつらい日々だった。この勝利はこの9月に亡くなった母に捧げたい」
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