2010年06月30日

2007年マニラ男子9ボール世界選手権:イングランド時代の始まり


ダリル・ピーチ

 予定より一日遅れてしまいましたが、2007年の世界選手権を回顧することにします。この年は2年連続のマニラ開催となりました。会場は前年のPICCからアラネタ・コロシアムに変更になりました。余談ですが、mathildaは直前におこなわれていたマカオ・インドアゲームズから直接マニラ入り。実はマカオで帯状疱疹が発症し、背中から腹部にかけての痛みと闘いながらの大会巡りでした。今となっては懐かしい思い出ですが、当時は結構きつかったですねえ。

【日本勢では内垣&川端が活躍】
 この年のステージ1では内垣建一が見事にステージクリア。その勢いのままに初日のTVテーブルでエフレンを撃破してしまいました。現地マニラに与えた衝撃は相当なものでしたよ!昨晩は皆さんも日本代表の応援で盛り上がったことと思いますが、この時のグループラウンド敗者最終、川端聡(Adam) vs デニス・オルコロ(Kamui)が面白かった。デニスの応援に地元のTVタレントがいて、鳴り物入りで大盛り上がり。我々も地元ONESIDE(マニラのビリヤード場です。我々ビリヤード関係の日本人にとっては、毎回本当に心強い味方になってくれます!)チームを中心にして対抗し、大応援合戦が繰り広げられました。普通、こういう場合は険悪な雰囲気になりそうなものなのですが、この時は何故か双方に仲間意識が芽生えてしまい、勝敗を超越した最高の雰囲気になりました。あの光景、野内麻聖美(Adam) に見せたかったなあ。ちなみにこの勝負には川端聡(Adam)が勝ち、最終的に9位タイという近年の日本勢最高成績を残しました。
 さて、前年アルカノのコントロールブレイクで物議を醸した9ボール世界選手権でしたが、この時はそれが更にエスカレートしてしまいました。まさに“チョン”と割るだけのソフトブレイクが大会を席巻してしまったのです。照明等のコンディションもあったのでしょうが、このソフトブレイクはTVテーブルで最も威力を発揮しました。ちなみに、今回の火付け役はフィリピンのロベルト・ゴメスでした。ちょっと面白い話があって、ベスト16戦の前にオランダのニールス・フェイエンのコーチがゴメスを訪れ「お互い本来はハードブレイカーなのだから、次の試合はソフトブレイクなしで戦おうじゃないか」と提案したんです。ゴメスはもちろん拒否(笑) 結果はゴメスのスコンク勝ち……(汗)

【ブスタマンテ事件】
 ソフトブレイクのせいでちょっと白けた感じになった大会でしたが、TVテーブルでおこなわれたベスト8のフランシスコ・ブスタマンテ vs ダリル・ピーチで世界選手権史上に残る大事件が持ち上がります。これが、「ブスタマンテ幻の勝利事件」です。4-9から捲ったブスタマンテが10-9でリーチ。しかし取り出しで出しミス。空クッションから行ったブスタマンテ。これが3-9キャノンになって勝利!……しかし!!これが9に先に当たっていたという判定。納得が行かないブスタマンテスがテーブルに戻らず、試合は15分に渡って中断しました。再開後、ピーチが取り切って10-10。最後はピーチが渾身のマスワリです。あの異様な雰囲気の中、取り切り&マスワリで勝負をひっくり返したピーチの精神力は本当に素晴らしかった。問題のショット、Youtubeにアップされているので是非御覧下さい。正直なところ、映像での判定はちょと難しいです。ですがビリヤードのルール上、同時ならばファールですから、判定は正しかったとも言えましょう。ただこの時、レフェリーのナイジェル・リースがそのショットの際に判断を下さず、黙ってテーブルを離れ、運営にビデオ判定を仰ぎました。これが混乱の元でした。ブスタマンテ&ギャラリーは勝ったと思って大騒ぎしてしまっていますから簡単に収まりません。実はブスタマンテ、自分でも「怪しい」とは思っていたみたいなんですね。狙っていた結果でもなかったわけですし。ですが今大会はブスタマンテの地元、マニラでおこなわれている世界選手権です。あの時ナイジェルが9ボールインを認めてしまえば、そのままOKになってしまったのは間違いないんです。ピーチ自身、負けたと諦めて、キューを片付けようとしていたくらいですから。ブスタマンテは後に、「あの場で判定が出されたなら仕方がないけど、ビデオ判定の上でファールを取られたのには納得がいかなかった」とコメントしています。ちなみに、ビリヤード(少なくともポケット)界では、ビデオ判定に関しての明確なルールはありません。あと、これは穿った見方ではあるのですが、大会主催者のマッチルームスポーツはイングランドの会社です。レフェリーのナイジェル・リースとミカエラ・タブを含めた主要スタッフのほとんどがイギリス人でしたから、あるいは……。まあ、もう終わってしまったことです。

【運営の奇策、大会を救う!】
 決勝に進んだのはロベルト・ゴメスとダリル・ピーチ。そして決勝戦がおこなわれる前夜、準決勝終了直後にマッチルームスポーツが“ソフトブレイク阻止”に動きました。TVテーブルを別エリアにあったテーブルと取り替え、照明、羅紗のコンディションを調整し、試合前の2人にこう宣告したのです。「我々はソフトブレイク阻止の為に出来る限りのことをやりました。もうこのコンディションではソフトブレイクは機能しません。2人にはハードブレイクを望みます」
 今大会のルール上、ソフトブレイクを禁止する手立てはありませんでした。もちろん、ハードブレイクを促すことは出来たでしょうが、それだけでは拘束力がありません。ちなみに、スリーポイントルールが出現したのはこの大会後のことです。決勝日、会場に行くと2人が思いきり割ってるもんだから、腰を抜かすくらいびっくりしましたね(笑) メディアルームでディレクターに事情を尋ねた時の、してやったりという素敵なウインクが忘れられません(^o^)
 決勝は9ボール世界選手権史上屈指の名勝負でした。最終盤、リードしながらもプレッシャーに押し潰されてミスしてしまったゴメスでしたが、技術と体力では彼が勝っていたと今でも思います。ですが最後に勝負を分けたのは、精神力の差でした。イングランド初の9ボール世界チャンピオン、ダリル・ピーチの誕生です。

【長い中断時代へ】
 思えば、これが今の“イングランド時代” の始まりでした。翌年ダレン・アプルトンが10ボール世界チャンピオンになり、彼は09年にマスターズにも勝ちました。今年に入ってからもWPA世界チーム選手権でイングランドが優勝し、カール・ボーイズが8ボール世界チャンピオンになっています。ただmathildaにとっては正直なところ、何故今イングランドなのか?は謎です。勝ちきれなかったゴメスはその年末に台北でおこなわれたスーパーカップでも準優勝。「もう準優勝はたくさんだ」、と言ったとか言わないとか……。
 08年、マッチルームスポーツはマニラで9ボール世界選手権の開催をアナウンスしていましたが、結局開催中止。結果的に、99年から9年間続いた同社のプロモーターによる9ボール世界選手権は07年が最後になってしまいました。優勝賞金も一番良い時で10万ドルありましたし、実際04〜07年にアジアの両ビリヤード大国、台湾&フィリピンでおこなわれた世界選手権は、イベントという意味では最高の大会でした。あの決勝TVテーブルで日本人が戦う日が来ることを夢見て大会を取材するのは本当に楽しかった。余談として、昨年マニラでおこなわれた10ボール世界選手権では、ステージ1から勝ち上がった古田和男が本戦会場のチープさに落胆し、やる気をなくしてしまったという逸話をあげておきます。
 08年大会が開催中止になった経緯にはフィリピン協会の内部紛争等、色々と複雑な問題が絡んで長くなってしまうので、今回は触れません。マッチルームスポーツは今後、ワールドプールマスターズを発展的に大きくして、世界選手権に代わるビッグイベントにしようと考えているようです。また、06年からおこなわれている国別対抗ペアマッチ、ワールドカップオブプールも好評ですから、今後9ボール世界選手権がマッチルームスポーツ主催に戻ることはなさそうな雰囲気です。

男子9ボール世界選手権2007:SPECIALページ!

マッチルームスポーツ主催による9ボール世界選手権決勝の歴史:

07年(マニラ)……ダリル・ピーチ W-- ロベルト・ゴメス
06年(マニラ)……ロニー・アルカノ W-- ラルフ・スーケー
05年(高雄)……呉珈慶 W-- 郭柏成(Adam)
04年(台北)……A・パグラヤン(Mezz) W-- 張裴偉
03年(カーディフ)……T・ホーマン W-- A・パグラヤン(Mezz)
02年(カーディフ)……E・ストリックランド W-- F・ブスタマンテ
01年(カーディフ)……M・イモネン(Mezz) W-- ラルフ・スーケー
00年(カーディフ)……趙豐邦 W-- イズマエル・パエズ
99年(カーディフ)……エフレン・レイズ W-- 張皓評

2006年マニラ男子9ボール世界選手権:ロニー・アルカノ、フィリピンの英雄に!

2005年高雄男子9ボール世界選手権:呉珈慶、衝撃の世界タイトル獲得!

2004年台北男子9ボール世界選手権:アレックス、世界チャンピオンに!

CENTRAL:サマーキャンペーン・スタート!
MECCA:Whittenケースがキャンペーン価格!
SHOPCUESCOM:MEZZ ACE-805&ロングEX入荷!
OTA:ジャンプショットのコツを大公開!
SPIDER:毎週火曜日は値下げDAY!
CSJ:ハイブリッドジャンプキューの新色入荷!
NEWART:ショウマン&マクウォーターの中古!
Lucky13:HAYATO THANKS GIVING!
K's Link:決算処分セールスタート!
TP&CC:サマーセール開催中!【6月30日まで!】
Pro Shop USA:気品溢れるEXCEED入荷!

ハウス要項
大会日程
2010年6月:






posted by mathilda at 12:36| 新潟 ☁| 世界選手権 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。