ロニー･アルカノ
これまで取材した中で最も盛り上がった大会はどれ？と聞かれたら、mathildaは迷わずこの大会を挙げますね。ビリヤード王国フィリピンで開催された初めての世界選手権。会場の盛り上がり方は本当に凄かった。
フィリピン世界選手権／2006年11月:
この大会を制したのはコントロール･ブレイクを駆使したロニー･アルカノでした。アルカノはグループラウンドを1勝2敗で通過するも、同組だったルン･チーズンのブレイクからヒントを得たコントロール･ブレイク（ブレイクで手玉を引き、2クッションさせてセンター付近に手玉を戻す）で快進撃。ベスト32では神様エフレン･レイズを倒してフィリピン中を落胆させ（笑）、ベスト8ではディフェンディング･チャンピオンの呉珈慶も撃破。この試合中、呉珈慶が自慢のハードブレイクを捨ててコントロールに走ったほど、アルカノのブレイクは決まりまくっていました。決勝の対戦相手は96年以来2度目の9ボール世界タイトルを目指すラルフ･スーケー。スーケーは01年にも決勝でM･イモネン(Mezz)に敗れていますから、3度目の決勝進出でした。余談ですが、この大会のイモネンはグループラウンド2勝1敗にも関わらず得失点で決勝シングルに進めませんでした。
戦前の下馬評は圧倒的にスーケー有利。ですが、決勝では圧倒的なアウェー状態がスーケーを飲み込んでしまいました。前日まであれほど当たっていたスーケーのブレイクが当たらず、取り出しが隠れまくり。対してアルカノはコントロールブレイクですいすいマスワリを重ねます。正直、17先の交互ブレイクは大失敗のフォーマットでしたね……。試合後、涙を流すスーケーの姿は本当に痛々しかったです。ですがスーケーは08年の8ボール世界選手権決勝で再びアルカノと対決。連覇を目指すアルカノの夢を潰し、見事2つ目の世界タイトルを獲得しています。
さて、この大会で一躍エフレン、ジャンゴと並ぶ人気者になったアルカノ。大統領晩餐会に呼ばれた際「どうして奥さんを連れてこなかったの？」と聞かれ「2番目と3番目の奥さんが怒るから」と答えたとか（笑） 07年4月の8ボール世界選手権にも勝ち、呉珈慶に続くダブル世界タイトルを獲得。07年はGuinness 9-Ball Tourのホスト･プレイヤーでもありましたね。また、07＆08年USオープンでは2年連続準優勝、08年全日本選手権準優勝と、世界トップレベルの活躍を続けています。
2年半もの間9ボール世界選手権が開催出来なかった伏線は、この06年にあったのかもしれません。06年はIPTが世界を鳴動させた年でもあります。そう言えば、IPTの賞金未払い問題が発覚したのもこの大会開催中のことでした。一時的に8ボールが復権したことで、“9ボール絶対”というプール界の常識が揺らいだのは確かでしたね。また、コントロール･ブレイクというウイルスが、9ボールというゲーム自体を狂わせ始めた大会だったとも言えます。コントロール･ブレイクに関しては、明日また解説したいと思います。
他にもスト様キュー放り投げ事件など色々なことがあった大会ですが、そのあたりは過去記事を御覧下さい。最後に日本勢に関してですが、この年のステージ2シードは奥村健、高橋邦彦(Mezz)、田中雅明の3名。“地獄のステージ1”からは高野智央(Adam)が見事に勝ち上がり、ベスト64まで進みました。大井直幸(Flannel)と青木亮二はステージ1最終で敗れ、ステージ2進出はなりませんでした。ちなみに、94年9ボール世界チャンピオン（02年は3位タイ）、奥村健にとってはこれが最後の世界選手権となりました。グループラウンド終了後も「mathilda君、あのヨーロッパの若い選手がいいんだよ」とか言いながら、楽しそうに試合を観戦していた姿が本当に懐かしいです。
フィリピン世界選手権／2006年11月:
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ハウス要項
大会日程
2010年6月：
